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「失礼します」
そんなかけ声とともに職員室の扉を開ける。その声が少し裏返っていたのは、職員室に入るという行為が多分に緊張感を生むからだろうことは想像に難くない。
「鍵をお持ちしました」
室内に入るとともに、用件を告げる。
「おう、三宮か。ご苦労さん」
そんな言葉を祐助にかけたのは、教師達の中では最も若く、端整な顔立ちなため、女子生徒から一種のあこがれのこもった視線を向けられ、多くの男子生徒からは強くねたまれている国語教師の花田だった。しかし、花田はそんな感情も意には介した風も無かった。何でも、彼の家は旧家で、子供の頃から先生と呼ばれる職業に就くようにといわれ続けていた彼はねたまれることに慣れっこになっているらしかった。
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