1.屋上

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 祐助がなぜそのようなことを知っているかというと、花田は祐助の担任でこそ無かったが、彼のクラスの国語を受け持っており、読書が趣味で、図書委員でもある祐助に対し、何かと本を紹介してはその感想を語り合う仲だったからである。花田にとって、最も親しい男子生徒が祐助であろう事は疑いようは無く、そのため、祐助自身は多くの女子生徒から羨望のまなざしを向けられたこともあるが、さりとて、それが彼にとって何かの足しになるわけでも無かった。ただ、花田が女子生徒の何人かに手を出している、そんな噂を耳にしたとき、根も葉もない噂だと鼻で笑い、不愉快な思いを抱けたことと、多くの男子生徒から負の感情をぶつけられる花田に対し、同情の思いを抱くことができたことだけが、祐助にとって幸運な点だった。
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