1.屋上

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「先週行われた実力テストの平均が悪かったと言うことでお説教を受けていたんです。そのために終礼が長引いて」 「ははは、村井先生らしいね。なるほどな。とはいえ、校舎に残っているのはおまえが最後だ。気をつけて、早く帰れよ」  それだけを言って視線を窓の外に向けた。普段なら近寄ってきて、この間紹介した本の感想についてなど、あれやこれやと話をしたがるはずの花田が、そこを動こうとしない。窓の向こうに何かあるのだろうか? 祐助はふと、そんな疑問を覚えたが、わざわざそれを確認しようとまでは思わない。鍵入れのふたを開けると、花田の言葉通り、祐助のクラスの鍵以外はすべてすでに所定の位置にかけられていた。祐助は唯一空白になっている場所に自分のクラス番号が書かれていることを確認すると、そこに鍵を戻し、きびすを返すと、失礼しました、と一礼して職員室を辞した。
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