1.屋上

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「そろそろ、日も暮れるよ?」  祐助の中では男女問わず親しげに会話するイメージの月森だったが、祐助は彼女と会話を交わしたことがなかった。それは、祐助と月森とでは住む世界が違ったからだ。月森がクラスの中での陽とするなら、祐助は陰だった。そのため、彼女と接点を持ったことは一度もなかった。いや、持とうと思ったことすらなかったのだ。それが思いの外、意外な場所で出会ってしまい、祐助は戸惑いとともにそんな言葉を口にした。 「ええ。そうね」  月森はただそう応えると、視線を祐助から外す。彼女の視線は校庭に注がれていた。
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