1.屋上

20/24
前へ
/445ページ
次へ
 スチール製の扉を閉めると、祐助は一気に現実に引き戻されたような気がした。今の光景は幻だったのではないか? あの月森さんがこんな所にいるわけがない、あれは自分の考え出した幻想だったのかもしれない。そんなことを思ってしまうほどに、普段、教室で見かける月森と先ほどの少女のイメージが祐助の中で合致しないのだ。  祐助は半ば逃げる様にして階段を降りていく。五階、四階、三階、と降りていくうちに、屋上での光景はますます現実感を失っていった。二階、一階、とたどり着いたところで、校庭にいた運動部員が騒いでいることに気がついた。
/445ページ

最初のコメントを投稿しよう!

245人が本棚に入れています
本棚に追加