一.屋上の少女

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 時刻はもうすぐ五時になろうとしていた。下校時間はもう目前なためか、校庭で部活動を行っている生徒達はすでに大半が片付けの準備に入っている。しかし少女はそちらとは反対側、裏庭に面した縁に立っていた。そのため、運動部員達から彼女を見ることはできず、彼らの発する楽しげな声は少女の背後から聞こえてきていた。  かぁ、かぁ、とカラスが遠くで鳴いている。昔の人はその声をあほー、と表現した。少女はその声を聞きながら、確かに私はあほだ、このような行為を選ぼうとする人間が賢いわけが無いではないか、と考える。
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