夕陽の下の安楽椅子探偵

１．屋上

　小説や漫画の世界では定番の屋上という場所も、実際の学生にとってはあまり縁のある場所ではないものだ。なぜならたいていの時間、そこにはきちんと鍵がかけられ、一般の生徒は立ち入り禁止になっているのだから。
　この中学の生徒である三宮祐助も、この学校に通うようになってすでに三年目に突入しているが、その間一度も屋上に出てみたことなど無かった。そして、つい先週まで、これほど足繁く屋上に足を運ぶことになるとは彼自身、想像だにしていなかった。その彼が、この一週間、屋上に通い詰めになっているのには訳があった。あれは、月曜日の事だったな、もうずいぶん昔のことのようだけど、まだ今週のことなんだ。そんな感じで、その時のことを回顧しながら、祐助は屋上の扉を確認する。