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扉を開いたとき、その向こうから、強烈な西日が飛び込んできて、祐助は思わず目を細めた。そんな彼の視界には、赤く染まった夕景が写る。そして、まるで夕日の中にたたずんでいるかのように、黒い人影が揺れた。彼が扉を開けたことによりその人物が振り返ったのだ。
「また来たの?」
冷たく、感情の抜け落ちたような、それでいて思わず心惹かれてしまうような声がする。その声の主は、太陽を背にしているために表情まではうかがえない。しかし祐助は、その姿を眺めながら、初めてこの扉を開けたときのことを思い出していた。
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