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宿に泊まることは、その宿の迷惑になるだろうからできない。
きっと俺が止まった日は、他の客は来ないだろうし、俺が止まった部屋はいわくつきの部屋と呼ばれる部屋になるだろう。
街中を歩いていると、人でこみあっているはずの道が、俺の近くだけはけていく。
人にぶつかることなどあるはずもなく、俺は本屋に入った。
本屋に入ると賑わっていた店内が静かになり、次々と人がいなくなっていく。
数分後には俺と店員だけとなっていた。その店員でさえも今すぐ逃げ出したいというような表情をしている。
俺は申し訳ないなと思いつつ、本を手にとり、近くにあるかごに入れ持ち運ぶ。
ふと、少し下を見るとそれはあった。
俺が大嫌いなあの本が。
俺の父が書いた本『悪魔』だ。
題名のとおり、悪魔のことが書かれている。赤い髪をした悪魔について。
つまり俺についての本だ。
皮肉なことにも、これはベストセラーになり、両親は周りからの同情を手に入れた。
怖かったのだろう。俺を産み、世間から嫌われるのが。
同情されれば嫌われることはない。世間体も大丈夫。
悪魔の俺を仕方なく育てていれば、かわいそうで運の悪い夫婦のできあがりだ。
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