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本にはあることないこと書かれている。
魔力の量がとても多い。これは本当。幼い時に暴力事件を起こした。これは嘘。
俺がやらかしたことを両親がフォローする話が多い。
最後には、悪魔を産んでごめんなさい。神に、世界に心から謝罪します。と締めくくられている。
誰がどう読んだって、とても良い両親と悪魔のような俺が書かれている。
生まれてきてごめんなさい。
この本を見かけるたびにチクリと痛む心のおかげで、俺が人間であることを自覚させてくれる。
『悪魔』から目をそらし、俺は別の本を次々とカゴにいれていく。
会計のためにレジに行くと、俺となるべく近づきたくないからだろう。
店員は、お金はいらないから早く出て行って欲しいと言う。
俺は自傷気味に笑い、店員にありがとうと伝える。
ヒッと怯える店員を背に俺は店をあとにした。
空間に本を収納し、再び歩く。生きていくことは難しくなさそうだ。
金なんてなくても、さっきのようにいらないと言われるからな。
フフっと笑いがこみ上げる。
ああ。
なんで生まれたんだろ俺。
楽しそうに笑う悪魔を怪訝そうに眺める人々。
悪魔はよく笑う。笑うしかない。笑うことで苦しさをまぎらわしていた。
狂ったように笑う悪魔を気味が悪いと避けていく人々。
悪魔は泣かない。泣いたことがない。
その事実が更に彼を悪魔らしくさせていた。
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