桐谷 駿

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    そんなこんなで記憶が戻らず、元の世界とやらに戻る方法も見つからないまま、数ヶ月の月日が経った。    一応、何もしなかった訳じゃない。  元の世界に戻るには、魔法が関係してるんじゃ?  と思って、この国の図書館に出向いたりしたが、適当な本を開いて、僕はすぐに閉じた。  当然かと言われればそれまでだが、書かれている文字がまず日本語じゃない。  英語も怪しい僕には読める訳が無く、すぐに立ち去った。   他にも色々試したんだけど… 「キリちゃーん。何ブツブツ言ってんのさー」  僕がこの数ヶ月のことを思い出していると、不意に意識を取り戻した。 「ん… いや、考え事だよ」 「んん? まあいいや、早く報告してメシにしよーぜ!」  そう明るく言って、目の前のシューベル…   通称ベルという青年は、大量の薬草が入ったカゴを背負い、さらに革袋を抱えながら僕を促してきた。   このベルという奴、最初に出会ったのは、僕がこの国のギルド『白の森』に入ってすぐのことだった。    自称 情報屋と名乗る彼は、見知らぬ僕を見てすぐに話しかけたのだと言う。  本人曰く「お前の素性を知ってみたい!」という理由だったのだが、  超が付く程のストレート発言を公の場で発言し、その後も僕に付き纏うようになったのだ。  色々と教えてくれるので、この世界の知識が無い僕にはありがたいが、代わりに僕の居る場所には突然現れ、さらには僕の食べ物の好き嫌いを網羅するという素晴らしい情報屋の姿勢を見せつけてきたが、    下手したらコレ、ストーカーですからね。  まあ、今はこうしてギルドから出される依頼を二人で行っているのだけどね…  
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