桐谷 駿

2/5
前へ
/6ページ
次へ
    「キーリリーン。そっちはどうだー? 順調かー?」   春。   極寒の地と言われるこの地も、春が訪れた。  この地の冬は雪に埋め尽くされ、ここ薬草畑や国を囲む森などは、白銀の世界となっている。  今はこの国… ウェルデン魔法国家、通称『魔法の国』からの依頼である、薬草採取を行っている。 「もう予備のカゴもいっぱいだよ。もう昼時だし、そろそろ戻って昼食にしようよ」   この薬草採取、朝から始めており、気がつくと太陽も高く昇っていた。 「さっすがー。何回もやってるだけあるねー」   そう言いながら、予備のカゴの他に、何の動物で作られた分からない、持参してきた革袋もいっぱいにしてきた仲間がそう言う。 「おおっ そんだけあれば、もう依頼は完遂だな。」 「…ベル。そんなに集めてどうするんだよ。僕よりも集めてるし… 依頼内容はカゴだけでも良いはずだけど?」 「やだなあキリタンは、追加報酬目当てに決まってるじゃなーい」 「追加報酬なんて見たことないけどね」   大量の薬草を詰めた荷物を抱えて近づいてきたのは、僕の仲間、シューベル・クライトンという名前の男だ。    髪は肩にまで長い茶髪で、後ろに縛って纏めているが、所々髪が跳ねている。少々クセがあるようだ。  歳は今年で17歳であり、ひょっとしたら僕と同い歳かもしれない。   同い歳かもというのには、理由がある。  僕には… 記憶がないのだ。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加