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僕には記憶が無い。しかし、全てを忘れたわけではない。
名前は桐谷 駿あり、高等学校に通っていた記憶があるので、おそらく17歳辺りだろう。
出身はもちろん日本であり、生粋の日本人だ。
学校での授業の成績は特に秀でたものは無く、運動はそこそこ得意な、至って普通の学生である。
意外と僕の記憶ははっきりしていると思うが、クラスメイトの事、先生の事、さらに両親の事まで綺麗さっぱり忘れている。
最初考えてみた時、どうやら人との関わりのみ、記憶が無いということがわかった。
さて、何度も言うが、僕は日本人だ。
アメリカだとか中国だとかロシアだとか、そんな国がある星、地球に居た。
ウェルデン魔法国家なんて聞いたことが無いし、そもそも魔法なんてあるわけが無い。
しかし、僕が立っているこの地は… この星は、そんな世界なのだ。
ある冬の日、いつも通り学校から帰宅して、その日の授業で出された宿題を済まし、夕飯と摂り、風呂に入り、就寝した。
そして目が覚めると、そこは白銀の世界…
何の前触れも無く、僕はこの世界にやって来たのだ。
目が覚めた時、私服しか着てない僕には雪が積もった場所を歩くのはとても辛かった。信じられない事に、やたらとデカイ狼と遭遇したりもした。
しかし、逃げている最中に馬車が通りかかり、二人の男性と少女に僕は助けてもらったのだ。
その時だ、魔法と呼ばれるものを見たのは。
馬車が僅かに青く光ったと思ったら、狼に目掛けて氷塊が凄まじい勢いで飛んで行き、狼を吹っ飛ばしたのだ。
その光景は、今でも覚えている。
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