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「とにかく、蓮華は嗄乃マヤの考えに気を払う必要はないのよ。
この場所にも十分過ぎるほど獲物はいるし、
今この瞬間にも脱落者は出て、それと比例して新たな挑戦者がこの街に来るわ。
嗄乃マヤにしても、未熟な挑戦者を早期に殺すあなたを咎めることはあっても、
あなたの狩りを邪魔することはないはず……」
そこで、ゆかりは不意に足を止めた。
左手に連なる高層建築郡。
右手を走る車道。
延々と続く幾何学的模様の細工道路。
向こうには旧市街地に行くための架け橋が見える。
そこは、ゆかりが初めて人を撃った場所だった。
愚かなわたしになった場所でもあり、今のわたしになった場所でもある。
「どうしたよ、オイ?」
「……なんでも無いわ、行きましょう」
足早に歩きだしたゆかりに蓮華は怪訝そうな表情で歩調を合わせる。
「さっきから聞きたかったんだけどさ、ウチらはどこに向かってるんだい?」
「風ヶ夜市立総合病院よ」
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