始まりの歌

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ゆかりは言った。 「病院の近くで、ある誘拐事件がおこるの」 「なんで、ゆかりがそんなこと知ってんだ?」 「わたしがそうするように人を雇ったのよ」 「雇った?オイオイ、アンタ本当に何者だよ?」 「……そんなことより、その事件には三人の少女が巻き込まれる予定なの。 多分、あなたの知り合いもいるんじゃないかしら」 蓮華は軽く下唇を噛み、目を細めて、 「その中の1人が嗄乃マヤってことか?」 この街で生きていくには、卑怯という言葉は敗者の戯言へと成り変わる。 それを覚悟で生きなければならない。 希望を持ちながらこの街へ入ろうならばその希望は、絶望へと変わる。 番犬なら尚更だ。 不幸にもそうなった者の末路は正直見ていられない。ただ言えるのは最期は実に惨めだ、ということぐらい。
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