始まりの歌

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蓮華はにわかに表情を曇らせて答えた。 「さぁね。 ただ、ウチは今までにロクなことをしてこなかったから街のルールなんて無視してたし、 それにたいていのヤツは、縄張り争いに負けて逃げ出してくんだろう? ウチはただ、計画無しに走ってこの街の縄張 りを失いたくないしね。 弱いヤツは生きる資格がなくて、強いヤツだけは生き残れる。 分かりやすいよな」 「ええ……確かにシンプルね」 単純なシステムの裏には複雑で困難な事実が隠されているのを、 一ノ瀬蓮華を含めてほとんどの挑戦者や、番犬は知らないし、知ろうともしない。 「話をもとに戻そう。 とにかくウチは、嗄乃マヤの考え方が気に入らない。 犠牲も知らずに、街のすべてを護ろうとするなんて現実離れしたバカの考えだ」 「では、蓮華にとっての犠牲とはなに?」 「これから先、ウチの役に立ったかも知れない挑戦者たちのことかな」
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