君へ。~From.R・T~

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メモを残すようになって一ヶ月が経った頃、俺は彼女を泣かせてしまった。 と言っても、直接何かしたわけではなく、数人で狭い通路を歩いている時に、前方に彼女が居る事に気付かず、こちらの不注意で彼女にぶつかってしまった。 彼女は小さな悲鳴をあげ、抱えていた資料を落とした。すぐに頭を下げ、何度も謝りながら散らばった資料を拾い集めていた。 「マジ、何やってんの!?」 こちらの不注意なのに、彼女を罵る声。それでも彼女は何も言い返せずに頭を下げながら資料を拾い集める。さすがに申し訳なくて、俺ともう一人で拾うのを手伝った。 その時、悔しそうに涙ぐむ彼女の顔を見た。胸に何かが突き刺さったように痛んだ。 彼女は拾い集めた資料を胸に抱え、足早にその場を離れようとした。仲間はすでに逆方向へ歩き始めている。 「ごめん。怪我無かった?僕がアイツに言っとくから」 周りに悟られないよう、彼女にだけ聞こえるように告げ、仲間の元に戻った。
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