君へ。~From.R・T~

6/27
前へ
/27ページ
次へ
それから数日後、取引先との打ち合わせが長引き、帰社したのは19時過ぎ。その日はめずらしくフロアには誰もいなかった。 重い鞄を置き、椅子に体を投げ出し大きく背伸び。溜息と一緒に重い腰を上げ、給湯室へ向かった。コーヒーメーカーのスイッチを入れ、一杯分のコーヒーが出来るまで時間は掛からなかった。 コーヒーを口にしながら、デスクへ向かう。そして全部の席が見渡せるところでふと立ち止まった。 フロア全体の明かりは消されているけど、所々に非常灯が点いている。 ポツポツと数箇所のデスクが照らされ、その中の一つ、左奥の…彼女の席。 今日一日、彼女はどう過ごしたのだろう?なんて思った。 誰とも言葉を交わさず、笑顔を見せる事も無く、一日を過ごしたんだろうか。 そんな事を思いながら席に戻り、鞄の中から書類と、取引先で貰った小さな包みを取り出した。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加