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暗闇に染まる夜道――自転車を走らせながら俺は帰路に着く。
夜道は結構肌寒い。
寒さを感じると、彼女の存在も感じてしまう。
一緒にいた頃に感じていた、彼女の温もり。
それは確かに温かくて、俺がかつて感じたことがなかった感覚で――
「なに考えてるんだよ俺は……」
呟いた俺の言葉は、闇に溶けて消えていった。
俺はあの時の行動に後悔なんてしていない。
彼女の事は好きだった。
確かに好きだった。
好きじゃないと言えば嘘になる。
だが、同時に限界というのも嘘ではなかった。
そう、俺は限界だったんだ。
俺は彼女に恐怖していた。
だから俺は彼女と別れ、この元の生活へと帰って来たんだ。
元の生活――今みたいに学校帰りにコンビニで夜までバイトをし、そして帰宅する毎日。
そんなありきたりな日常の中で、俺は彼女と出会った。
そう、あの時から全ては始まり、そして最後はこうなる運命だったのかもしれない。
――彼女と出会ったあの日から。
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