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一方のアレイスターも、そんな男に恐れを見せる事なく言葉を返す。
「君が考えんとする事は概ね予想はつく」だが、とアレイスターは一拍置いて「この街は、それを易々と成就させはしない」
学園都市統括理事長は、淡く淡く笑う。
喜怒哀楽の全てを浮かべながら、同時にそれら全てを否定する。人間の思考では到底説明する事のできない笑みを浮かべて笑う。
「面白い。止めるものなら止めてみたまえ。君の掌握する街の『能力者』とやらで」
対して、赤い眼の男は、低く低く笑う。
他の全てを犠牲にしてでも、己の進むべき道を揺るぐ事なく歩む。そんな野望と信念に満ちた者だけが持つ笑みを浮かべて笑う。
「―――我々の持つ『ゾディアーツ』の力を」
その瞬間、我望の傍らの虚空から一つの人影が現れた。その人影は、出入りに必要なものがないビルに来客に連れて来る案内人ではなく、
そもそも人間でもなかった。
全体的な輪郭としては人間に近くとも、人間ではない異形だった。
特に目を引くのは、異形が体に羽織る金色の刺繍が全体に施された黒いクロークと、右手に持つ杖だった。
しかし、それは杖と呼ぶにはあまりにも仰々しい形状だった。
異形の者の身長に届く長さを誇り、ホロスコープなどに描かれる乙女座の紋章が先端に刻まれている。
斧と羽扇子が紋章の左右に取り付けられており、それが単なる杖でなく、強力な武器である事を示していた。異形がそれを一振りするだけで、人肉などバラバラに引き裂くだろう。
男が言葉を残した直後に、異形が杖を振るう。
杖の軌道になぞって現れた光の渦が、赤い目の男と異形を包み込む。
それが過ぎ去った後には、液体で満たされたビーカーの中に浮かぶ学園都市統括理事長だけが、窓のないビルの中に残されていた。
「―――自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を獲得した者と、星の力をその身に宿した者」
一人残されたアレイスターは、変わらぬ姿でビーカーの液体に揺られる。
「プランのズレに到来した新たなイレギュラー」
喜怒哀楽の全てに当て嵌まりながら、その全てを当て嵌まらない笑みを絶やす事なく、『人間』アレイスターはささやいた。
「面白い―――これだから人生はやめられない」
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