天・校・体・験

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     2  天ノ川学園高校の体験学習は、参加自由で入場制限無しというかなり開放的なものだった。  そんな天校の校舎には、能力開発ではなく宇宙開発に力を入れるという、この街では珍しい方針を持つ体験学習に参加した、様々な学生の姿が所々に見受けられる。  佐天涙子と彼女の友人である、アケミ、マコちん、むーちゃんの四人も、そんな参加者の一つだ。  どうやら、開催に先んじて天校の校長先生の挨拶が行われるらしく、参加者達は校舎の前の広場に集合していた。 「って言うかさ、校長先生の挨拶って、ほとんど地味でつまんないよね」  退屈気味に佐天に話し掛けるのはマコちんだ。彼女としては、ありきたりで面白味のない校長先生の挨拶よりも、これから待ち受ける体験学習の方に興味が向いているらしい。 「まあ、これが終わったら各自自由行動らしいし、ほんのちょっとの辛抱だよ」 「これで校長先生が一一一(ひとついはじめ)みたいなイケメンだったら面白いんだけどなー。アケミはどう思う?」 「ないない。むーちゃん夢見すぎだって」  一一一(ひとついはじめ)とは、今年の八月末に人気女優とのスキャンダルが取り沙汰されたばかりの、イケメンアイドルの名前である。  しかし、世間一般の校長先生に対するイメージは、壮年の男というのが大半だ。若いイケメンの校長先生など、出来の悪い三流学園ドラマでしかお目にかかれないだろう。  そうしている内に、広場の壇上の上に一人の男が姿を現した。 「ねえ、校長先生ってあの人かな?」 「まさか……。あんな若い人が?」  しかし、むーちゃんとアケミの予想は呆気なく外れた。 「皆さんこんにちは。天ノ川学園高校校長の速水公平です」 「「「(嘘ぉ!?)」」」  彼女達の驚きは無理も無い。  なぜなら校長の速水公平は、赤いレザージャケットを着こなし、サラサラな頭髪と爽やかな笑顔がよく映えるイケメン。加えて年齢は外見から想像する限り二十代半ばという、およそ校長先生という肩書きにはあまりにも似つかわしくない風貌だったからだ。  もう一度言おう。  世間一般の校長先生に対するイメージは、壮年の男というのが大半だ。
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