天・校・体・験

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「本日は、我が校の体験学習に足を運んで頂きありがとうございます」  とはいえ、校長の第一声の挨拶はありきたりなものだった。 「天ノ川学習高校では、生徒一人一人の個性を尊重する自由な校風を掲げる事で、人生に一度きりの高校生活を有意義なものとする事を目標としています」  生徒の個性を尊重する。  天ノ川学園高校は、校長先生の外見だけでなく、校風でさえ他の学校とは一線を画していた。 「そして、科学の発展が飛躍的な進歩を遂げた現代、人類は遂に宇宙へ足を踏み出す力を得ました」  しかし、と天校の校長は言葉を繋ぐ。 「宇宙は夢と希望に満ち溢れた素晴らしい世界である一方、数々の危険を孕む未知の領域でもあります。軽い生半可な気持ちで臨むのではなく、強い覚悟と重い責任を胸に抱き、目の前に立ちはだかる困難にも屈する事なく進み続ける力が必要です」  そこで速水は一旦言葉を区切り、参加者を見渡した後に再び話しを再開する。 「そのため、我が校ではNASAやロシア航空宇宙局と連携し、宇宙開発の人材育成に必要な専門的な教育を生徒達に行っています」  校長が語る夢の様な校風と、彼自身のルックスも合わさって、参加者のほとんどが話しに聴き入っている。  しかし、そんな校長の話しも終わりを迎える。 「今回、我が校の体験学習を開催する事となったのは、世界中の科学技術が結集したこの学園都市で能力開発を受けた君達に、宇宙と我が校の素晴らしさを知ってもらいたかったからです。長くなりましたが、この天ノ川学園での体験を、是非有意義なものとして下さい」  そして、天ノ川学園高校の校長は、最後にこう締め括った。 「宇宙に夢を―――星に願いを」  挨拶を終えて壇上から降りた校長速水公平には、自然と参加者から拍手が贈られていた。
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