噺家の描く笑いのオチ Rakugo_of_Cancer.

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     6  地表の多くが青い海に覆われ、太陽系の第三惑星に区分される地球を、眼下に一望できる宇宙。  そんな空間に、一つの人工衛星が静止していた。  三○メートルほどの本体の両側に、大型のソーラーパネルが翼のように設置されている。  衛星の国籍は判別できないが、居住区も兼ねていると思われる銀色の本体部分には、『M-BUS(エムバス)』の文字が描かれている。  その内部。  無数の物があてどなく宙に浮かんでいる、約九○立方メートルほどの無重力状態の部屋の中に、一人の人物が他の物に紛れて浮かんでいた。  作業服に似た青い繋ぎを着用しており、顔に金属製のマスクを被っているため性別は判別できない。  マスクの目の部分から漏れる黄色い光を、一つだけの窓の外に広がる地球に向けていると、部屋の壁(室内が無重力であるため、実際は床や天井である可能性も否定できないが)に並ぶ計器の一つに通信が入る。  マスクの人物は、一般人には理解できない暗号化された通信を一瞥し、 「変身認証、承認」  地球を見下ろす宇宙の静寂に包まれて、その場を移動する事のなかった人工衛星M-BUS(エムバス)に変化があった。  銀色の本体部分が三つに分かれ、真ん中の部分が先端を地球に向けたのだ。  真ん中の先端部分は、人一人が調度ピッタリ収まるくらいの直径の穴があり、傍目には巨大な光学衛星兵器のようも見える。  やがて人工衛星M-BUS(エムバス)は、その外見の通り、先端の砲口から眼下の地球に向けて青いレーザーを照射した。  コズミックエナジーと呼ばれる青く輝くレーザーは、地球の大気圏を一瞬で通り抜け、正確無比の軌道で目標の座標へと向かう。  日本の首都東京、  その西部一帯を覆う未来都市、  学園都市へと。
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