噺家の描く笑いのオチ Rakugo_of_Cancer.

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 キャンサー・ゾディアーツが鋏を振るう。  巨大な高層ビルを一撃で真っ二つにする恐るべき斬撃を、仮面ライダーメテオはただひたすらに躱し続ける。  回避の合間に、目にも留まらぬ打撃を加えるが、そもそも攻撃がダメージにならないのでは、戦況は自然とキャンサー・ゾディアーツの方に傾いてゆく。 「よく足掻くねぇ」  上段から振り下ろされた鋏を、根本の部分を掴む事で受け止めるメテオだったが、キャンサー・ゾディアーツは、無防備となった腹にすかさず蹴り食らわせた。  体制を崩した隙を逃さず、左腕の鋏がメテオの体を真一文字に裂く。 「ぐッ……ああああああああああッ!!」  切断というより、ほとんど爆発に近い音と膨大な火花が散った。  フォーゼと同じく、変身者の身を様々なダメージから守るはずの仮面ライダーの体に、耐え難い激痛が走る。 「『上知と下愚とは移らず』」  勝ち誇ったように、キャンサー・ゾディアーツが宣告する。 「残念だけど、アンタがアタシに傷一つ付けられない事は、この先天地がひっくり返っても揺るがないよ」  だから早いとこくたばってオチを付けさせちゃくれないかねぇ!! と言って、蟹座の一二使徒が、その狂暴極まりない鋏を振り上げる。 〔Jupiter Ready?〕  不意に鳴り響く、軽快なイントネーション且つ疑問形の電子音声。  音声は、仮面ライダーメテオの右手首に取り付けられた、ガントレットのような形のデバイスから発せられていた。  腰のドライバーと同様のスイッチソケット、指の腹が乗るほどの大きさのタッチパネル、その横に三つ並ぶスライド式のレバーで構成されている。  メテオは、三つのレバーの中の真ん中のレバーを横に動かしていた。  そして、鳴り響く電子音声に気を取られた結果、キャンサー・ゾディアーツはメテオに止めを刺す事ができなかった。 「今更何をしようってんだい?」  メテオは答えなかった。  キャンサーの問いに答える事なく、左手の人差し指をタッチパネルに沿える。 〔OK Jupiter!〕  再び発せられる軽快な電子音声の直後、  仮面ライダーメテオの右手に『木星』が現れた。
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