噺家の描く笑いのオチ Rakugo_of_Cancer.

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 メテオの右手に現れた『木星』が、ジークンドーの型を主軸にした正拳によって、キャンサー・ゾディアーツの体に叩きつけられる。  彼は己の体に絶対の自身を持っていた。全身を包む甲羅がもたらす防御力は、黄道一二星座の力を持たない『通常』のゾディアーツはおろか、自身と同格の一二使徒(ホロスコープス)の中でも、群を抜いていると自負している。  それを証明するかのように、ドオッ!! という鈍器で殴った音を何百倍にも拡大させたような轟音を響かせながらも、『木星』の拳は蟹座のゾディアーツの体に傷を付けるには至らなかった。  にもかかわらず、  キャンサー・ゾディアーツは、距離にして一○メートルに渡って吹き飛ばされていた。  御坂美琴の切り札である超電磁砲(レールガン)は、ビルの壁に直径二メートルの風穴を開け、空気の余波だけで風力使い(エアロシューター)の真空刃を掻き消すと言われているが、キャンサー・ゾディアーツの甲羅は、重戦車や軍用戦闘機を一撃で鉄屑に変えるようなダメージを、完全なまでにシャットアウトする強度を持つ。  しかし、そんな防御力の破格さの反面、キャンサー・ゾディアーツそのものの重量は、あくまで一般的なゾディアーツの域を出ない。  もちろん、優に一○○キロを越す重量は人間から見れば桁違い以外の何物でもない。だが、そういった『人間を超越した相手との戦闘』を前提としたスペックを持つ仮面ライダーは、重さ一○○キロオーバーの怪物や物体を、持ち上げたり投げ飛ばしたりする戦いなど日常茶飯事である。  例え驚異的な防御力を持っていようとも、重量が一般的なゾディアーツと大差ないのであれば、ダメージを与える事はできなくとも、衝撃で吹き飛ばす事はできる。  木星の質量と直径と体積は、地球との比較でそれぞれ三一八倍、一一倍、一三二一倍にも達する。  それらをコズミックエナジーによって部分的に再現されて、仮面ライダーメテオの右手に現れた『木星』は、その膨大な圧力の恩恵を受けて、キャンサー・ゾディアーツの頑丈な甲羅に破壊力を遮断されながらも、その体を大きく吹き飛ばす衝撃を秘めた拳を生み出したのだ。
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