噺家の描く笑いのオチ Rakugo_of_Cancer.

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「……」  歌星賢吾の表情は、依然として険しさを保っている。  本来ならば、フォーゼは佐天涙子を狙って現れたキャンサー・ゾディアーツと戦うはずだったのだが、そんな最中、佐天の通学路とは正反対の場所に現れたオリオン・ゾディアーツとの戦闘のため、キャンサー出現の一報を受けながら、現場への急行が遅れてしまったのだ。  加えて、オリオン・ゾディアーツの現場には、事態の鎮圧に乗り出した大勢の警備員(アンチスキル)が駆け付けている。仮に佐天が助けを求めた通報を行ったとしても、到着までには時間が掛かるだろう。 「都合が良すぎるな。やはりこれは敵の策略と判断するべきだろう」 「私も同じ事を考えていたわ」  今回のオリオン・ゾディアーツの出現は、あからさまにフォーゼの急行を妨害する、一二使徒(ホロスコープス)の計略というのが、『仮面ライダー部』副部長の歌星賢吾と、名誉会長の風城美羽の出した結論だった。  ピリピリと、フォーゼのレーダーモジュールと似通ったアラームが鳴る。 『もしもし、こちら白井―――くろ、こ……ですの』  ブツッブツッという途切れがちな音声に、訝しげな表情を見せる風城美羽の隣で、瞬間的に虚空を渡る事で電波の送信位置が次々と移動する、『空間移動(テレポート)』による移動法の弊害なのだろうと、歌星賢吾は冷静に推測する。 『一足先―――に、お姉……様が佐、天さんの―――元へ向かっ……ていますの。臆病者、に護衛役……を任せると、は何事か、と怒り心―――頭でしたわ……』 「それについては、追い追い説明するつもりだ。風紀委員(ジャッジメント)の活動直後で悪いが、俺達をキャンサーの元まで転移してくれないか?」 『そう言……われると思いま、したわ。元々そのつ―――もりでそち、らへ向か、ってい……ますので―――お安い御用ですの』  最後の言葉が途切れがちで無くなったのは、連続の転移を終えた白井黒子が、歌星賢吾と風城美羽の間に現れたからだ。 「いつ見ても慣れないわね」 「一三○・七キログラムが、わたくしの転移可能な最大質量ですの。お二方の体重の合計が、それに収まっている事が前提ですのよ?」 「Oops! 自分の体重に気を配る事ができないと、天校のクイーンは勤まらないのよ」
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