緩やかに終わりゆく日常 The_Everyday_End.

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     1  学園都市。  東京都の西部を中心に神奈川や埼玉に跨がる程の面積を誇り、世界中の教育機関や研究施設が集約された巨大な科学の街。  外部とは二○年も三○年も科学技術に差があると言われ、街のあちこちに置かれた風力発電の風車が、風に吹かれてプロペラをカラカラと回している。  様々な特色を持つ全二三の学区で構成され、中学から高校までの中等教育の学校が多く集まる、ここ第七学区もその一つだ。  程よい昼下がりの休日、第七学区のとあるファミレスの窓際の席に、四人の中学生の少女の姿があった。 「今日の夜は、何年かに一度しか見られない流星群が観測されるんだって!」  やや興奮気味に話しているのは、黒いセミロングの少女『佐天涙子』。  白梅の花を模った髪飾りが添えられ、明るく天真爛漫で年相応の言動や表情を見せる少女だ。  携帯サイトのニュースから手に入れたその情報を、隣に座っている少女『初春飾利』に振った。  様々な種類の大量の花飾りが頭に添えられており、まるで頭に花瓶を乗せているかのようにも見える。 「流星群なんて滅多に見られないじゃないですか。今日が非番でよかったですね白井さん」  飴玉を転がすような甘ったるい声色で、初春は自分と対面の位置に座る『白井黒子』に話し掛けた。  茶色い髪を赤いリボンでツインテールに結んでおり、綺麗というよりは可愛いという言葉が似合うだろう。  カジュアルな私服姿の初春や佐天とは異なり、ベージュのブレザーに紺系チェック柄のスカートを着こなしている。 「流星群が何ですの。今夜は久々にお姉様との愛の時間を過ごすべく―――――」  そんな白井の頬をつねり、彼女の怪しげな言葉を黙らせる少女がいた。  佐天と対面の位置に座り、白井と同じ制服姿の少女『御坂美琴』だ。  白井にお姉様と呼ばれる辺り、恐らく他の三人よりは年上だろう。茶色い髪を肩の所まで伸ばし、全体的に活発で能動的な印象を与え、考えるよりも先に体が動くという言葉が似合いそうだ。
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