托された言葉

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 冬季の問いの意味はなんだろうか。 将人は考える。 兄貴分を失ったことに泣けとでも言うつもりだろうか。 それならば余計なお世話だ。 涼と将人はそういう関係じゃない。 そんな甘い関係じゃない。  お互いに憎まれ口を言い、お互いに依存せず、お互いを利用する。 いくら涼からの恩があったとしても、所詮は闇の者同士の関係だったのだから。  泣け、などという言葉で汚されたくはない。 安い慰めもいらない。 それは将人と涼の関係を壊すことになる。 死が分かつその時でも、その関係だけは変えてはならないのだ。 「愚か者、だよ。」  先程の将人と同じように鼻で笑う。 ゆっくりと振り返った将人が見たのは、暗い笑みを浮かべた冬季の顔。 そしてその手にあるたった一輪の花。 淡い紫の花弁は涼がいつも身に付けていたピアスの色によく似ている。 「この花は苧環(オダマキ)という花でな。花言葉は愚か者。涼にはぴったりの花だと思わんか?」  冬季は将人の横に並ぶと、その花を涼の骸の上に落とした。 静かな音を立てて落ちた苧環はやはり涼によく似合う。  愚か者。 そう罵るように小さく口にした言葉。 冬季の意図がわからない。そのまま何も言わずに立ち去る冬季を、将人はただ、無言で眺めていた。
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