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第一話
「兄(にい)……やん?」
その日は雨が酷い日だった。降りだしたのは、まるで僕に罪を塗りつけるようなタイミングで、あの人の血と混ざり僕を咎人とする。
僕が、僕なんかが彼の――兄やんの手助けなんてできるはずないのに、その傲慢さが彼を殺してしまったのだ。
悪鬼討伐任務を受けた彼は亡き父から受け継いだ剣を手に任務に出ることになった。幼かった僕は、ついていくと駄々をこねて彼を困らせた後についていくことになる。
下級の悪鬼だけと連絡を受けていたが、突如現れた上級悪鬼により、彼の隊は半壊することになる。
もし、僕がついていかなければこんなことにはならなかったはずなのに――
僕はゆっくりと握り締めていたソレを放す。
それは、彼らの血を塗りつけた亡き父の剣の柄。
体に浴びているのは、冷たい雨と彼らの返り血――――
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