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――あと、二人。
刀を一瞬浮かせ、ちょうど鞘の真ん中でそれを捕らえる。
一人が放った拳を紙一重で避け、鳩尾に鞘の先を叩き込む。男はそのまま膝を付いてからうつ伏せに倒れる。
しかし、アッパーを決めたはずの男が落ちていたナイフを拾い上げており、それを後ろから容赦なく刺そうとしてくる。
少し動きが鈍ってしまい、左の頬が切れるが、この際気にしない。
左回転を緩めないまま、鞘をある程度加減を入れたつもりで男の首筋に叩き込み、気絶させる。
――あと、一人。
この時、自分がどんな顔をしていたのかがわからない。しかし、魔法を使える男はまるで恐ろしい何かを見るような目で僕を見ている。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!化け物ぉぉぉぉ!!殺される!死にたくねぇ!」
男は仲間を捨てて、この場から去っていく。化け物なんて失敬なと思って周りを見ると、野次馬達が居なくなっていた。
ふと、右手に妙な感覚を感じる。
そこを見ると、そこには鞘のない剣が彼らの血を纏っている姿があった。
剣だけではない。体も真紅の血で染まっている。足元には血だまりが水のように溜まっていた。
……えっ?
鞘が無く、悪鬼を斬るための刃が晒されてある。
――いつから、鞘が無くなっていた?
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