第一話

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「ぷっ、あはははは!」  ついに吹き出してしまい、彼女は腹を抱えながら笑い始める。こちらとしては何が起きているかが全く分からないまま、目を丸くするしかなかった。  しばらくすると彼女は笑い声をあげたせいで出た涙を拭い、僕の方を見る。 「いやー、ごめんね。助けてもらったのに謝られるとは思わなかったから、つい」  助けてもらった。てことは、あの花屋のところまでは現実だということか。なら、彼女に聞けば何か分かるかもしれない。そう思い、僕は口を開く。 「あ、あの、なんで僕はここにいたのでしょうか……」 「あり?覚えてないの?君、魔法を使う人を追っ払ったあと、いきなり倒れちゃったんだよ。で、病院に運ぼうにも鬼狩隊員が町で怪我したなんてなったら、君がいろいろ問い詰められるんじゃないかなと思って、ここに匿ってる次第であります、軍曹殿!」  簡単な敬礼をしながら、彼女は簡単な説明を終える。  しかし、知りたいのはそこじゃなく…… 「あの、僕、三人を斬ったとかはしなかったですか?」 「え?そんなわけないよー。殺人犯を匿うわけにはいかないし」  殺人犯という言葉に少し心がズキッとなるが、なんとか平常心を保つ。 「あ、自己紹介が遅れたね。私はティメリクス・シュリディング。ティクって呼ばれてるよ。よろしくね、タクス・バーネイドくん」  あれ、なんで僕の名前を……それに何か聞いたことあるような…… 「なんでって顔してるねー。私、これでも元鬼狩訓練生なんだよ。君と同期の、ね」  ウインクしながらそう言うティクさんは、悪戯な子供のような感じがした。
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