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「訓練はまだ終わってない。立ちなさい」
藤色の髪を顔の横だけ伸ばしたショートヘアの女性は、桃色の瞳で僕を見つめる。
しかし、訓練の相手は彼女ではない。
僕から見て、彼女の手前にいる袴姿の少年が訓練の相手だ。藍色の髪を持ち、片目は髪で隠れている。整った髪や顔を見ると、一瞬女性と見間違うほど綺麗だ。
前髪には可愛らしいドクロの髪止めを使っているのだが、これは彼が後ろの彼女から【命令】されて付けていると聞く。
「トワ殿、これ以上はさすがにタクス一士の体が持たないでござるよ?」
「氷蘭三尉、今は仕事中です。トワ一尉またはトワ隊長のどちらかでしょ?それに、まだ訓練中だと言ったはずよ?」
「わ、わかったでござるよ!」
後ろを向いてた彼は、振り向き際にため息をついて下に向けていた刀の青い刃を上げて、それを構える。
森の木漏れ日を浴びた青い刃は、まるで水を得た魚のように輝いているように見えた。
「ほら、タクス・バーネイド一士、自身の剣を持ちなさい。あなた、筆記試験は大丈夫だけど、実技で落としていたら鬼狩として意味ないわよ?」
自分の隊長である女性にあれこれ言われ、僕は剣を支えに立ち上がる。しかし、臆してしまい、震える剣を惨めに構える。
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