第一話

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「……あなた、剣みたいな刃物に対して恐怖心を抱いているわね?」  確実に図星をついてくるトワ隊長に僕は何も答えることができない。  事実、僕は今のところ、剣や包丁などを見るだけで動悸が激しくなる。  【あの事件】以来、ずっとだ。 「はっきり言うわ。事務部か衛生部、せめて浄化班か後方支援班への異動を薦める。これは、今後のあなたを左右する問題よ。座学首席生として鬼狩に貢献するか、実技底辺の実力で戦いの中で死ぬか、あなた自身で決めなさい」  レイピアを鞘に納めて、彼女はそのままその場から立ち去ってしまう。  氷蘭三尉は僕に何か話しかけようとするが、言葉が詰まってしまったのか、彼女に続いて行く。  森の中には、僕一人になってしまう。  目を瞑りながら地面に刺さった剣の柄を握り、それを鞘に納めると布袋にそれを入れてから紐で縛り付ける。  剣が見えなくなったところで安堵し、僕は地面に寝転がる。  別に体が弱いわけではなく、寧ろアウトドアだと自負している。首席といっても、予習復習をしていたらなれただけで、ガリ勉というわけではない。  一部の隊員――主にエルフなのだが――プライドが高い方が多いようで、座学首席で訓練生を卒業した僕を妬む奴がいるようだ。
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