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だが、あのトラウマがある限り、僕は戦えない。トワ隊長の言う通り非戦闘員になるべきなのだろうか。
いや、それではダメなんだ。
僕には選ぶ権利はない。あの事件でこの手を血に染め、何人もの命を奪っておいて生きている。
せめて、彼らが救うはずだった人々は救わなければ……
「……それでも、ダメなんだろうな」
ボソリッと独り言をもらして、起き上がる。
ひとまず、寮に戻ろう。寮に戻ったところで、この問題が解決しないことは分かっているのだが。
――戦いで死ぬか、あなた自身で決めなさい
耳に残った彼女の声が、再び僕を戸惑わせる。
これまでの半年間の任務は運よく下級悪鬼のみだったので、剣を袋から出さずに棒のようにして戦ってきた。
もちろん、訓練生の時にはそんな戦い方は教えられてないし、僕自身も学んだ覚えはない。しかし、剣を抜かずに戦うしかない僕にとってはそれが精一杯の戦いだったのだ。
これからも下級悪鬼のみならそれでもいい。しかし、上級悪鬼が現れたら、この戦い方では確実に殺られる。
そう言われ、僕はトワ隊長達に訓練をつけてもらうようになったのだが、彼女の決断は僕の異動だった。
確かにそれが効率的かもしれない。けど、そんな理屈がましいことでは、あの罪を償うことができない。
戦いの中で死ぬ?それでいいよ。
誰かを守って死ぬなら、僕はそれでいいよ。
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