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今日は風も強かったせいか突然倒れてきた鉄パイプを、音尾が素早く反応し近くにいた生徒を庇って怪我をしたのだ。
鉄パイプが足に直撃したのか、庇った生徒に悟られないように然りげ無く足を抑えている。
その上庇った時に受身もあまり取らずに少々派手に転んだせいか、膝からは見ていて痛々しいほどに出血していた。
それなのに音尾は安心させるように緩く微笑みながら、庇った相手を気にしているようだ。
音尾のその痛みを堪えているような、どことなく無理をした笑い方に、無意識に身体が反応し、気づけば音尾の元へと向かっていた。
「えっ、は、早山様…!?」
「早山、くん…?え、ちょ、わっ…!」
「落ちねえようにしっかり掴まってろよ」
「あ、う、うん…」
足に負担がかからないように姫抱きし、掴まるように促せば突然の俺の登場に驚いた音尾も、肩を遠慮がちに掴んだ。そんな音尾を一瞥し、あまり震動を与えないよう注意しながら保健室へと向かう。
姫抱きした音尾は予想より軽く、腕や足は程よくとまではいかないが軽く筋肉がついている他は骨しかない。
普段何食べたらこんな体型になるんだ…ちょっとした衝撃でぽっくり折れるんじゃないか?
初めて間近で見る音尾を観察している(変態などではない。断じて)俺に対し、音尾は状況からして保健室に連れて行かれることを察したのか反論もせず、ただ軽く俯いて俺の服をぎゅ、と握っている。
……やべ、鼻血出そう。
悶々としている間にいつのまにか保健室に到着し、その扉を開くと、普段から行方不明な保険医は今日も今日とて例に漏れずその姿はない。
軽く溜め息を吐きつつ中に入り、音尾を椅子に座らせ、勝手を良く知っている棚から慣れた手つきで消毒液などを出す。
「染みるぞ」
「うん………っつ、」
音尾は消毒による痛みに微かに身をよじらせた以外は特に動かず、ただじっと治療をしている俺の手先をを見ていた。
……やりずれぇなおい。つーか照れるぞおい!
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