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「ほら、終わったぜ」
「………早山くん」
膝にはガーゼを貼り、足首には湿布を貼り軽く固定し、治療し終え道具を片付けていると、
不意に音尾に名前を呼ばれた。
…つーか今更だけど俺の名前知ってたんだな。
「何だ」
「…正直、ね?膝もだけど足首。凄く痛かったから助かった、ありがとう」
癖なのか小首を傾げふわり、と笑いかけられて思わず心臓が跳ね、わずかに頬に熱が集まる。
くそ、可愛いな。
「今まで早山くんにはもしかして嫌われてるんじゃないかってずっと思ってたから、ちょっと安心したかも」
「嫌う?なんで」
「早山くん、いつも僕のこと見てたでしょう?もしかして何か悪い事とか気分を害するようなことしたのかなって思って」
………気づかれてた!?見てたのを!!?うわ、ちょ、え、はずっ!!
頬どころか顔全体に熱が集中し紅潮し、見られまいと堪らず音尾から顔を背けると、音尾は気分を悪くするどころかどこか楽しそうにクスリ、と笑った。
「九十雲」
「……は?」
「僕のことは九十雲でいいよ。だから僕も……李久、って呼んでもいい、かな?」
どくん
それが恋だと気付いた瞬間。俺は、この時だった。
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