―運命の人―

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両親とそうそう顔を合わせない、それは合わす時間が全くないからというのもあるが 故意的におれが合わせないのだ、なんせおれは家族一の嫌われもの…期待にそぐえなかった駄目息子… 足音をたてずに階段を降り居間を覗くと妹が両親と話していた 「そうかそうか!よくやっているなぁ文月は…」 父さんは少し微笑んでそう言い妹の頭を撫でていた 「本当に私たちの自慢の娘よね」 母さんは笑顔で妹に近付きそう言い手を合わせた これを人は理想的な家族と呼ぶんだろうな この輪に、この温かさにおれは居たはずなのに ギィッ…居間の扉を開けると待っていたのは冷たい視線に父さんの無関心な声 「…実斗か。呼ばれたら早く来なさい」 母さんはおれを見た途端、食器を洗いはじめる 「…何?話って」 「なんだその態度は、そんなに俺達と話すのは嫌か。」 お前らが不機嫌な態度にさせるんだよ、お前ら自分の顔を鏡で見てみろ… 「…別に、今忙しいから」 「忙しい…ねぇ。ご飯にも降りて来ないで、一体何やってたんだか、服もまだ学生服のままじゃないの…まったく…」 母さんが苛立った声で洗いものをしながら言った …降りて来ないでと言ったが、見れば調理器具にはおれの分はなく真っさらだ もし来ていたら今作るところだとでも言ったのだろうな
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