序章

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「ははは、手より良く動く口だな……ケーブルはしっかりしとけよ? 一度外れたらもう戻れねぇぞぉー」  画面の端で笑う中年の男は、言いながら機体のケーブルを揺らしてみせた。 「怖いこと言うなよな……にしても硬ぇな、これだけ他のと違うのか」  苦笑いをして作業に戻る。 「新品をもう壊したのか? まったく、しっかりしろよ」 「そんな事無いと思うんすけど……あれ?」  今、クレーターの上に人が……。  作業を中断し、人が見えた辺りを拡大するが何もない。 「見間違いか、そもそも宇宙服無しに外を動けるはずがない」  シャトルからだとしても、通信くらいするだろ。 「……お、おいなんだアレ! ……バッ――」  突然切れた通信にドリルを止めた。  今まで散々脅されていて、思わずまたかと声を漏らす。
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