プロローグ

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長い睫を震わせて、彼はうっすらと目を開いた。 最初に視界に飛び込んできたのは、真っ白い天井だった。 かすかに、消毒液の匂いがする。 (ここは……?) 白濁した意識の中で懸命に記憶の糸をたぐり寄せながら、彼はゆっくりと身を起こそうとした。 途端に左肩に凄まじい激痛が走り、顔を歪めて崩折れる。 「……あっ……くっ……!」 震える指でシーツを握りしめ、彼はほっそりした肢体をのたうたせてあえいだ。 「気がついたか。よかった!」 ふいに野太い声が響き、誰かがドタドタとベッドの側に走り寄ってきた。
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