第三章 模擬戦

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「いやぁ流石は仁姫どの。ニンジャバリアーが通用しないとは分かっていても、素晴らしい見切りでゴザル!」 「ふふん。でしょでしょ、もっと褒め称えて崇めてくれてもいいんだよ?草陰くん」 「草陰稜(くさかげ りょう)」。それが彼の名前である。 アルクトゥルス学園の制服の袖を折って七分丈にし、茶色の髪を一つ結びにして、黒姫と同様に口元を隠す程の大きさのマフラーを巻いている、如何にも"忍者スタイル"な少年である。 「…で、今日も勝負?」 「もちろんでゴザル!模擬戦でいい成績を残すのもさることながら、仁姫どのに"まいった"と言わせる事も目標のひとつでゴザルからな!」 いつからか習慣となっている、稜との一騎討ち。結果は言わずもがな、黒姫の全勝であるが。 暗黙の了解で二人は互いに絶妙な距離を取り、思い思いの構えを取る。 そしてその二人の間に舞い散って来た植木の葉が、4枚に切れた。 直後、互いのセンサーブレードが不可思議な音を上げ弾け合い、一騎討ちがスタートした。 距離を取って2丁のセンサーガンに持ち替える黒姫。それを追う様にステルス装置を展開しつつスタンガンで足止めを狙う稜。 黒姫はアリーナの壁面を気流に乗って上昇しつつトリガーを引く。が、計10発放たれた不可視の弾丸も容易く稜を捉えることはない。 「電撃ビリビリ!」 稜はアリーナの屋根に降り立った黒姫の着地を取る様にスタンガンを放つ。 それを見切った黒姫は、空を蹴る様に一度跳ね、後ろに着地しつつ躱した後、逆に稜の着地を取るべくトリガーを引く。 牽制の6発。本命に更に14発。 だが稜は右に大きく弧を描きつつそれを躱し、黒姫に格闘を仕掛ける。 地面を蹴って回避する黒姫。稜に向けて迎撃を図りたい所だが、センサーガンからはリロードの合図が表示されていた。 その一瞬の戸惑いを突いて稜のスタンガンが飛んで来る。 「うぐッ…!」 大きく体を跳ねさせて膝をつく黒姫。直撃だ。 「斬り捨て、御免!」 今度は真っ直ぐ接近しながら格闘を図る稜。センサーブレードによる一撃が黒姫を捉えた。
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