第三章 模擬戦

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「……なんちゃって♪」 「ムムッ?!」 かに思えた。 ケロッとした表情で稜の攻撃に合わせセンサーブレードを叩き付ける黒姫。スタンガンは躱されていたのである。 「えっ、演技だったのでござるか?!」 「そうだよ。攻撃の見えない模擬戦ならではの技♪」 不可思議な音と共に体勢を崩す稜。黒姫はその一瞬の隙を見逃さずに2本のセンサーブレードで切り開く様に斬り抜けた。 校章から全身に電撃が走る稜。 「む…無念でゴザル…」 支えを失い、膝から地面に倒れ、一騎討ちはまたしても黒姫の快勝と終わった。 「さて、あっちももう終わったのかな」 アリーナの屋根から大きく一度跳ね、気流に乗りつつ校舎の屋上に降り立った黒姫。 ここにも数人の生徒が倒れているが、今はそれらに用はない。用があるのは、校庭の真ん中に立っている一人の男子生徒。 「僕よりあっちを目標にした方がよっぽど為になるよ、草蔭くん」 やや暗い青い髪。制服を綺麗に着こなし、マフラーの様に前に垂れた襟が特徴の、隣のクラスの学級委員。 風澄徹(かざすみ とおる)だ。 その精悍な顔つきの双眸はまた、最後のターゲットである、屋上に立つ黒姫を見つめ返している。 屋上から飛び降り、ふわりと地面に着地した黒姫は、そのままゆっくり歩いて徹の元へ向かう。 「やぁ、また君か」 先に口を開いたのは徹だった。 「全校生徒代表して、その言葉をそっくりそのまま返してあげたいかな」 わざとらしく言いつつ、こめかみを指で掻く黒姫。 「まぁ逃げ回ってるだけで徹が全部倒すからたまたま生き残ってるだけなんだけどね」 「…まぁ、そういう事にしておくよ。…対決はするのかい?」 「またまたご冗談を。僕があの徹に敵うワケないじゃんか」 「黒崎さんもなかなか謙虚だな。その謙虚さを、もう少し僕も見習わなければならないかもしれない」 そう言って徹はセンサーガンを黒姫の額に向け、 「黒崎さんとは一度、本気で戦ってみたいと思ってる」 「結果は分かってるから遠慮します…」 「…そうだな、結果は分かってる」 トリガーを引き、不可視の弾丸を受けた黒姫は、そのまま後ろへと倒れた。
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