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立ち並ぶ高層ビル。
今となっては美しさすら感じてしまうほどの幾何学的構造を持った建物の間を吹き抜ける風が、"黒姫"のメイド服のスカートを揺らす。
向こうは一体この景色をどう思っているのだろう?
建物同士によって生み出される乱気流に乗って飛び回る一羽のカラス…もとい、
"向こうの黒崎仁姫は"
気付けばスカート内のホルスターから武器を抜き去り、刀の形に変化させていた。
全身に力を込め、まるで刃を投げるかのように衝撃波を飛ばす。
それは寸分の違いもなく目標を捕らえる…わけもなく、刀による一閃で粉々に打ち砕かれる。
その一撃でこちらの存在を確認した"敵"は、その場で刀から銃に持ち替える。敵の接近を悟った黒姫は、VMを双銃の形に変化させ、迫り来る"敵"に向けて撃った。
タタタンッ…
寸分の狂いもなく敵に向けて撃ち出された弾は全部で6発。その全ては刹那にして目的を逸れ、弾け飛んだ。
正確には撃ち落とされたのだ。
「そんな、ゲームじゃないんだから…」
言うより早くVMは刀の姿に変わっていた。
仕掛けるかと身構えた瞬間、"敵"の急接近。黒姫は高く飛び上がってその一閃を回避した。
「ふー危ない危ない」
ギリギリで回避出来た緊張で火照る顔を手で扇ぐ黒姫。
刀を振るい、トリガーを引き、響く銃声、飛び、避け、あるいは金属が弾け合う音。
高速で繰り広げられる戦闘が、体温が、くまなく体力を奪い去って行く。
だが、どちらかが倒れるまで戦闘は続く、戦いはこれからが始まりなのだ。
だから黒姫は戦う。
自分の未来のためではなく、
仕える王家の未来のために。
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