きんいろの ゆびわ

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「お前、どこ見てんの」 双葉が目ざとく気付いて言う。 「ホントに麗おじさん命だね、そんなに好き?」 「好きだもん!」 愛美は即答した。 後から上がってきた慎一郎夫妻はつい微笑む。 似たようなことを言っている子がいたね、と傍らの妻に言い、どうでしたかしら、と妻は返した。 おじ夫婦の、こしょこしょとしたやりとりを見て、愛美は、いいなあ、と思った。 恋人とは違う、夫婦の関係は格別だ。 両親もよく言い合いをしてるけれど、基本はとっても仲が良い。いいな、素敵だな、と思えるふたりが身近にいるから、私もそうなりたいと思っているだけなんだ。 けど、最近は麗に「好き」と言う時、少しばかり恥ずかしい。どきどきする。 何故なんだろう……。 「ああー、雲にかくれちゃって見えないよう」 末っ子の三先(みさき)が叫ぶ。手には、「いっしょに見ようね」とおじさん猫・都をしっかり抱えてはいるが、付き合わされる猫はかなり迷惑そうな顔をしている。 「あの雲が切れてくれると良いのだけどね」 完全に月が太陽に隠れるまであと数分、どうか風向きが強くなって雲を払ってくれますように。 東京で金環食を見れるのは、生きてみられるのは生涯で今日だけなんだもの。 「お願い、お願い―」 愛美に双葉、三先はなむなむと祈る。 都はかーっと大あくび。 子供だねー、と言いながら、一馬は斜め上の天を見る。
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