きんいろの ゆびわ

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今日で人生が変わるわけではないけれど、いつだって好きな人たちと共にすごせる時間は生涯でただ一日のこと。 大好きないとこに、おじさん・おばさん。置いてきちゃったけど、お父さんとお母さん。そして、麗。 彼らといっしょに過ごせる時間が、少しでも長くあれますように。 愛美はグラスを掲げ、いつになく暗い空を見る。 雲のフィルターを通しておぼろな輪郭を描く太陽が、一瞬にしてぱっと輝き、四肢に光が当たって温かさが染みわたる。 グラスを通して見える太陽は、月とぴったり、一筋の輪郭を残して重なった。 「見えたねえ!」 愛美はとなりの麗に言う。 「ああ、そうだね、きれいなものだな」 「うん」 重なり合う時間はわずか5分程度。 ふたりは、ベランダに集う彼らは、ただ天を見上げた。 曇天とは違う、薄暗闇の空に浮かぶ金色の輪は、細い金の指輪のようだ。 「私、あのリングみたいな指輪が欲しい。金色の、金だけのが」 「いつか君のだんなさんになる人に、買ってもらうといい」 麗は言う。 自分が買ってあげる、とは言ってくれないんだ。 おませな中学生の愛美はかなりがっかりし、でも、と思い返す。 いつか、買ってもらうんだもんね。 その時はおそろいの。 麗とふたりで、同じのをつけるんだ。 指一本分だけすきまを空けて、彼の隣に立つ愛美は、光を取り戻していく太陽に願う、麗の名前には、レイ、光という意味もあるんだって。 彼が、私の光になってくれますように。 「こら―っ! 愛美!」 下の方から父の声がする。父の後に仏頂面の母もいる。 やだ、今頃来たんだ。バカだなあ。おかあさんとふたりで見てればよかったのに。 「離れろ! 麗も、ふたりとも離れろー!!」 いやだもんね、と愛美はあかんべえをし、となりの大好きな人に、思い切りしがみついた。 「こらこら、止しなさい」 と言って彼女の肩に置かれただけの手が、身を離そうとしないのを喜びながら。 ー 了 ー
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