前編

2/27
161人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
 たとえば、自分の好きな子がフリーであったとしよう。 その場合、あなたはきっと何らかのアプローチをかけるはずだ。 それは、多くの人が当てはまると思う。  しかし、イケメンと呼ばれるたぐいの人が、同じく好きな人に攻勢をかけたらどうか。 そして、彼の方がより距離を縮めていたらどうか。  おそらく、自信のない人は諦めてしまうであろう。それは、彼我の戦力差を分析した結果であるといえる。 しかし、その分析は正確と言えるだろうか? 絶対に、劣勢の人は勝てないのであろうか?  そうではない、と歴史は答える。実際に世界の戦史をひも解くと、少数の軍勢が大軍をやぶった例は少なくない。 背水の陣で二十万の大軍を潰滅させた韓信。五万の軍団で、総勢三十万ものペルシア帝国を滅ぼしたアレクサンドロス。そして、桶狭間で十倍の敵に勝利した織田信長。  大軍であることは、かならずしも勝利につながるとは限らない。重ねて言えば、かのナポレオンの愛読した『孫子の兵法書』にも、「兵は多きを益とするにあらざるなり」と説いている。  これはなにも、戦争にかぎった話ではない。兵法の極意は、高校生の恋愛でもいえることなのである……
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!