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「話を戻そう。実はな、この忌田が私に恋愛相談をしてきたのだ」
安孫子が自慢げに言った。なるほどなるほど。
「忌田くんと言ったか。今からでも間に合う、相談相手を変えなさい。安孫子では危険だ」
「待て待て。お前はなにか誤解している。私にはな、歴史と兵法書で培ってきたノウハウがあるのだぞ。そのへんの発情猿におとっているなどとは思っておらんわ」
安孫子は自信満々に胸をはった。しかし、どういった事情があれば、その肩書きで恋愛に首をつっ込めるのか、ものっすごい問いたい。
「また話がそれたな。ともかく、私と伍藤、この二人でわが部下である忌田の恋愛を成就させてやろうではないか、ということだ」
「ほっほう、それは面白そうだな」
珍しく、安孫子がいい提案を出した。ちょうどやることなかったし、暇つぶしにはちょうどいいな。
「忌田もそれで良いのか?」
「ええと……、僕はこういうこと初めてだし、みんながいると心強いかなぁ、なんて……」
忌田はなよなよしてるというか何というか、小動物みたいな仕草でそう言った。その仕草に、安孫子がピンときたらしい。
「伍藤よ。忌田をペットにしたいのだが、どう思う?」
「言わざるをえないか。きもい」
あいかわらず安孫子はぶっ飛んでいた。忌田は訳が分からず、おろおろとしている。そういえば、と俺は忌田の方を向いた。
「まだ、俺から自己紹介してなかったよな。俺は伍藤。安孫子とは、まぁ腐れ縁で中学からずっと一緒なんだ。まぁ、助言なんて大それたことができるか分からんが、よろしくな」
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