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七海が一瞬たじろいだ。
「な、何よ。何なのよ」
虚勢を張る七海を10秒程見据えると、部活仲間を振り返る。仲間は、七海から男子生徒へ視線を移す。
「なぁ。聞いてくれ。今、部長は悔しそうに、あいつに頭を下げた。皆も悔しそうに頭を下げようとしている。俺も、悔しい」
そこで言葉を切った男子生徒は、仲間をゆっくりと見渡す。
「悔しい?あんた、誰に向かって言ってるわけ?私がいなければ、大会にも出られないのよ?」
七海が鼻を鳴らして、言葉を放つ。男子生徒の背後からでも、自分が一番のように。
男子生徒は、振り返らず仲間達に語りかける。
「俺は、俺達は、ほとんどがダンス経験が無くて、この部で初めてダンスをやる。ってメンバーばかりで。……だから、ダンス経験者のあいつの言葉を、聞いて来た。そうだよな?」
皆は、コクリと頷く。もう誰も見ていないというのに、七海は余裕の笑みで当然だと言いたげだ。
自分が居なければ、部は成り立たない。そう思っているようだ。
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