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「はぁー。ねぇ、よく考えてよ。一緒に海外にいきましょ。」
母さんの言葉に俺は首を横に振った。
「誰になんと言われようと絶対いかねぇ。」
「でも・・・独り暮らしなんてやっぱり無理よ。」
母さんは悲しそうにうつむく。
そんな姿に胸が痛まないとは言わないが、俺は絶対に首を縦に振らなかった。
「あっ!!寮のある学校に行けばいいのよ。」
母さんは顔をあげて、にこっと微笑んだ。
「俺、転校なんて」
「転校するか海外にいくかのどちらかよ。それ以外は認めないわ。本当は一緒に来てほしいけど、それは母さんのわがままだし。だからといってあんたを一人にすれば不健康な食生活になるのは目に見えてるし・・・」
うっ!!
そ、それは・・・
「でも・・・」
人見知りの激しい俺が転校なんて・・・
今の高校にも、二年生になってやっと慣れたところなのに・・・。
「あー、確か、昔近くにすんでいた東宮さんのところの息子さんが寮のある高校に進学したって去年の年賀状に書かれていたわね。えーと、あんたと同い年の・・・なんていったかしら?」
「羊(よう)のこと?」
東宮羊とは小学校低学年まで近所に住んでいた同い年の男の子だ。
羊は本当に良い奴で俺の親友だった。
今では年賀状のやり取りくらいしかないが・・・
「羊がいる高校ってことは泰虎(たいが)兄もいるのかな!?」
泰虎兄は羊の一つ上の兄貴で、俺のことも本当の弟のように可愛がってくれた。
「泰虎君がいるかどうかは分からないけど」
「行く!!泰虎兄がいるかどうかは分からなくても羊がいるなら転校する!!寮があるところならいいんだろ?行くよ!!俺。」
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