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時森さんと別れてから十分程経過した頃。
帰り道も大半が経過し、僕の家がもう見えそうになったそんな時だ。
先ほど感じた嫌な予感が現実となって目の前に現れた。
けど、そいつは先ほど想像したようなクラスの男子などではない。
外国人だ。
しかも、全身を黒スーツの黒革靴。そしてとどめとばかりに黒いサングラスまで掛けている。
その恰好はさながら映画の『メン・イン・ブラック』でトミー・リー・ジョーンズが演じたKそのものだった。
ちなみに僕はUFOなんて今までで一度も見たこともなければ、そもそも信じてすらいないタイプだ。
そいつがいきなり電柱の裏からにょきりと生えてきた。
「うぉ!?」
当然ながら僕は驚いた。
むしろ走って逃げださなかったことを誇ってもいいと思う。
ただ、この場合は走って逃げた方が正解だったかもしれない。
無視して通り過ぎようとしていた僕に向かってその外国人が話しかけてきた。
「大杉友幸だな?」
その見た目とは裏腹に流暢な日本語がその口から流れて少し意外に感じる。
だがそれは一瞬で、そんな怪しい恰好をした見ず知らずの外国人が自分の名前を知っているという事実に背筋が冷たくなる。
「そ、そうだけど……」
警戒心をマックスまで上げて僕はそう答えた。
どこで知られたにせよ、名前を知られてた以上ここで無視を決め込むのは危険な気がしたからだ。
僕の返事にその男は頷くと、これまた外国人とは思えない日本語で話しかけてきた。
「突然だが、しばらくの間俺に付いてきてもらおう」
「っ!?」
男のその言葉に僕は思わず身を固くする。
だが、それも一瞬だった。
「なぁにそう固くなるなって」
「へ?」
突然その男が纏っていた威圧的というか凄味のあるオーラが消える。
そこで僕は初めてこの男が自分とあまり年が離れていないことに気が付いた。
そして、外国人の青年はサングラスを取りながら言った。
「ハンバーガー、奢るぜ?」
サングラスの奥から現れたのは愛嬌のある綺麗な碧い瞳だった。
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