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「つ、疲れた」
その日の放課後、僕は時森さんと一緒に帰っていた。
だが、ここまで来るのは本当に長かった。
五時間目の休み時間には本当にリアルな『リアル鬼ごっこ』を体験し、そして先ほど映画『大脱走』なみの脱出劇を披露してようやく僕はクラスの男子陣から逃げ出すことが出来た。
正直、もう心身ともにへとへとだ。
「お疲れ様♪」
時森さんがものすごい笑顔でそう言ってくれる。
少し前の僕ならその笑顔に参ってしまっていただろうけど、今の僕にその手は通用しない。
なにせ時森さんときたら僕がそれこそ生きるか死ぬかの瀬戸際で逃げ回っているというのに、それを見て助けるどころか手を叩いて笑っていたのだ。
いや、まだ笑っているだけなら百歩譲って許すとしよう。
僕が逃げた方向やら隠れた場所を相手にリークするってどうよ!?
お蔭で僕が何回死の淵まで追い詰められたことか……。
「ごめん、ごめん。つい」
「はぁ……ついで人を殺しかけないでよね」
「大丈夫!私は実行犯じゃないから!」
「うん、ある意味じゃ主犯だしね」
今思うとクラスの皆に僕たちのことがばれたのだって、時森さんがわざと漏らしたような気がしてならない。
いや、まさかとは思うけどね。
そうこうしている間にも分かれ道が近づいてきた。
昨日僕が告白したあの分かれ道だ。
明日は土曜日で学校は休み。
僕は別に部活などには入っていないから明日一日暇だ。
そして時森さんも特に部活に入っているという噂は聞いたことはない。
……これはどこかに誘ったほうがいいのだろうか?
ちらりと隣を歩く時森さんを見る。
時森さんは僕が見ているのに気付いていないのか、前を見たまま歩いている。
その歩く姿は本当に綺麗で、未だにこの人が自分の彼女だなんてちょっと信じられないくらいだ。
と、そうやってぼぅっと時森さんに見とれていたのがいけなかった。
「それじゃあ、友幸君。またね」
「え?ああ!!」
気が付いたらもう分かれ道についてしまっていた。
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